0717

「夕立に気をつけてください。」 ろくに目もくれずに音声だけを拾い上げて、テレビの電源を落とす。なんとかってアナウンサー。毎朝見ているのに、名前がなかなか覚えられない。 部屋に差し込む朝日を全身に浴びて、夕立という言葉は瞬間で姿を消す。傘では…

荷物はいくつ

なんだか背中がやけに重いと思って、立ち止まってみる。 背負っているのは、リュックサックひとつ。 それ以外は何もない。 昨日も一昨日も背負っていたはずなのに、今日はなんだかいつもと違う。 小さなベンチを見つけて、腰かける。 リュックのチャックを開…

守りたいもの

自分を偽ることをおぼえたのは、いつだろう。 人の為と書いて、偽り。 私が私を偽るのは、誰の為なのだろうか。 私ですら結論が出ていないのに、遥か昔から存在する漢字は知っているのだ。 ひとのためだと。 となりの誰かが泣いた。 なぜ泣いたのか、分から…

故郷の小さな公園で花火をしました。

新しい世界に憧れていた。 自分を形作ったもの 自分を育てたもの そのすべてを壊したくて 想像以上に私は私が嫌いみたいだ そうやって街を飛び出した私は 故郷になんか帰りたくないって思っていたんだ 帰れないって思っていたんだ 自分が生まれ変わるまで 父…

お祭り

お題「お祭り」 薄暗い夜の道 赤く灯る灯篭 水風船の模様が 僕のゆらゆら流れる心を映している 人混み渦巻く駅の改札 浴衣姿の君がきょろきょろと僕を探している その姿をながめながら 柱の後ろに隠れてる 少し意地悪をしてみたり ひらり 揺れる袖口から見え…

帰り道

お題「ちょっとした贅沢」 夏の晴れた日のこと 日陰のない一本道をゆっくりと歩く うちわでぱたぱたと仰ぎながら 君は振り向く 「コンビニに寄ろう」 僕の返事なんて全く聞く気のない彼女は 1番近くのコンビニにずんずん入っていく 高い位置で束ねた髪が揺れ…

絵の具

白いレンガの道をゆく 街灯の明かりが照らす細い道 1人静かに歩く 携えていたはずの地図は どこかで落としてしまったようだ 持っているものは 未来への期待と未知への不安だけ 過去の自分を白と黒で塗りつぶし わずかな絵の具で未来を描く 時折すれ違う人は…

雨の日に。

カラフルな傘とは対照的なモノクロを描く空に何を願おうイヤホンを片耳だけ垂らし傘を肩にかけ俯くその先に映る自分は昨日を見つめているちょっと憂鬱な朝を振り切るように歩き出した足先を濡らす雨は微かな温もりをもたらすはずなのに光をもたらす影に影を…