帰り道
夏の晴れた日のこと
日陰のない一本道をゆっくりと歩く
うちわでぱたぱたと仰ぎながら
君は振り向く
「コンビニに寄ろう」
僕の返事なんて全く聞く気のない彼女は
1番近くのコンビニにずんずん入っていく
高い位置で束ねた髪が揺れる
汗がにじむうなじを横目で見ながら
僕はその後ろに続く
コンビニという世界に入った僕は
冷風に吹かれ 1人異世界を楽しむ
ぼーっとお菓子のコーナーを見ていると
彼女はカフェラテ片手に買い物を終えていた
「いこ」
彼女の短い言葉に引きずられ
異世界への名残り惜しさにそうっと蓋をした
彼女がカフェラテを買う時は機嫌がいい証拠
夏の戯れにも負けず 1日をやりきったご褒美
いつかそう言っていた
彼女と別れてから数分
ぼーっと彼女の背中を見送り
その姿が見えなくなってから
そっとコンビニに入る
さっき感じた冷風も 異世界も
今は僕の前に現れない
まっすぐにドリンクコーナーへ向かう
僕はコーヒーが苦手だ
ミルクを入れても 砂糖を入れても
全く好きになれない
彼女の飲んでいたカフェラテを持って
レジに向かう
外に出てみると
夕暮れで空が紅く染まっていた