絵の具
白いレンガの道をゆく
街灯の明かりが照らす細い道
1人静かに歩く
携えていたはずの地図は
どこかで落としてしまったようだ
持っているものは
未来への期待と未知への不安だけ
過去の自分を白と黒で塗りつぶし
わずかな絵の具で未来を描く
時折すれ違う人はみな
自分とは違う顔をしている
ここはどこだろう
手探りで見つけたものを手放せず
持っていたはずの絵の具をこぼしてしまった
あの日の僕はどこへ向かうのか
鏡に映る知らない自分と
街を歩く知らないあの子
大きく膨らむ知らない感情を
愛していきたい
雨の日に。
カラフルな傘とは対照的な
モノクロを描く空に何を願おう
イヤホンを片耳だけ垂らし
傘を肩にかけ
俯くその先に映る自分は
昨日を見つめている
ちょっと憂鬱な朝を振り切るように
歩き出した足先を濡らす雨は
微かな温もりをもたらすはずなのに
光をもたらす影に
影をもたらす光に
嫉妬のような 愛情のような
強く儚い想いを抱くのは
なぜだろう
雨はいつかあがるという真実から
もがき 逃げ惑っていた私も今では過去で
空はいつまでも哀しい顔をしていた